活動報告3

ここには,活動報告の続きを載せます。

R2-3 八女の自然に親しむ会2024年~
R7  キルギス共和国の自然
R8 日生教2024年東京大会から

R2-3 八女の自然に親しむ会2024年~


<4月21日>みやま市清水山

今回の話題は「シイノキの板根」・「イヌカタヒバ」です。

 「板根」というのは,根が地上部にもあり,それが板状になっているものを言います。植物体を支える他,呼吸を助けるものもあるそうです。清水山のシイノキは,ツブラジイが多いようですが,スダジイもあり,その中間的な形質を示すものもあるような気がしています。写真のシイノキはツブラジイ的形質が強い気がしますが,あえて「シイノキ」としました。個人的な見解では,両者を別種として区別するのは無理な気がしています。ちょうど,斜面にはえていて,斜面の下側に板根が発達しているのが面白いと思いました。

 「イヌカタヒバ」は,日本では石垣島や西表島などの南の島に分布し,沖縄県では絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。園芸用に栽培され,それが多くの場所で逸出し,家の石垣などで繁殖するようになったようです。自生地では絶滅危惧種が,多くの場所で普通種になってしまっている訳です。このような話はよく聞く話ですが,「イヌカタヒバ」の場合は,地球温暖化も関係している気がします。


9月8日>グリーンビア八女山中渓谷

 今回の話題は「センボンヤリ」・「センニンソウ」です。

 「センボンヤリ」は春と秋に花を形成します。春は通常のキク科の花で,別名「ムラサキタンポポ」と呼ばれているように,タンポポのようなわたげ(果実)をつけます。秋の花は閉鎖花で開花することはないようですが,内側に筒状花があり自家受精してやはり果実を形成します。ツユクサのように受粉が成立しないときには自家受精で種子を形成するケースは多くあるとは思いますが,閉鎖花の場合は,初めから他花受精をしない仕組みをもっていることになります。ここで,「センボンヤリ」の不思議をまとめてみます。

① なぜ,春と秋に異なる花形成をするようになったのでしょうか。

② なぜ,春と秋の花形成の方法は両方とも現在まで継続されているのでしょうか。
皆さんも考えてみてください。

「センニンソウ」の仲間は,葉に変異が多いのでやっかいです。園芸ではクレマチスと呼ばれている仲間です。近縁のコバノボタンヅルとボタンヅルには,葉にギザギザ(鋸歯)があります。果実の色はかなり異なるようですが,花の段階で同定するときは基準に使用できません。センニンソウの葉も写真のように葉に刻みがありますが,鋸歯はないようです。葉の形には変異が多いので,確実に同定するには,果実ができるのを待った方が良さそうです。


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R7  キルギス共和国の自然

 天山山脈に抱かれたキルギス共和国は美しい風景と高山植物,そこに舞う蝶に恵まれた自然豊かな地域である。2024年6月28日から7月6日までの9日間,キルギス共和国に行く機会を得たので自然をいくらかの写真で紹介したい。
 今回の旅行は福岡空港から韓国のインチョン空港を経てカザフスタンのアルマトイへと飛んだ。アルマトイからキルギス共和国のビシュケクへと入り,トクマクを経てソン・クル湖畔へとバスで進んだ。ここでユルタに2泊して,周りの山々の植物観察を行った。その後バルスクーン峡谷,チョン・アシュ峠付近の3か所で植物観察を行った。また各地に行く途中でも植物の観察を行った。

写真1 今回の旅行の行程。主に3か所の高原に行き,自然散策をした。1,ソン・クル湖畔(約3000m )6月30日~7月2日 2,バルスクーン峡谷 (約3500m)7月3日 3,チョン・アシュ峠付近(約3500m)7月4日 

 アルマトイからソン・クル湖畔へいく途中にカザフスタンのタムガリの岩絵群を見学し,その後キルギス共和国に入りトクマクにてブラナの塔と石刃を見学した。塔の回りは野の花が咲き乱れ,蝶が数多く乱舞していた。
 アルマトイからソン・クル湖畔へいく途中にカザフスタンのタムガリの岩絵群を見学し,その後キルギス共和国に入りトクマクにてブラナの塔と石刃を見学した。塔の回りは野の花が咲き乱れ,蝶が数多く乱舞していた。         

  トクマクからソン・クル湖畔へ行く途中にクルマク峠(3430m)で植物観察を行った。

 ソン・クル湖畔のユルタで2泊しソン・クル湖畔やその周りの山々で植物観察をした。湖畔2日目は天候が安定せず晴れたと思ったら雨が降り,朝方には激しい霰となった。気温も低く夜はストーブをつけた。また晴れの時間もあり湖畔の散策を行った。常に風が強く蝶は風の強さと気温の低さで飛べず,花や葉にしがみついていた。湖畔には家畜が放牧されていて,背の低い高山植物が咲き乱れていた。特にエーデルワイスが群落を作っていた。

 ソン・クル湖畔からイシク・クル湖畔のタムガに降り,バルスクーン渓谷へと植物観察に行った。バルスクーン渓谷も3500mを超え,高山植物の宝庫である。

 最後の植物観察はチョン・アシュ峠近隣で行った。中国との国境近くである。キルギス人もあまり訪れることがないといわれ,自然がそのまま残されている。家畜が放牧されている所では高山植物は単純な植生となりやすい。チョン・アシュ峠近くではあまり放牧は行われていないように見え,高山植物が咲き乱れていた。3500mを超えると蝶も少なくなるが,ヒカゲチョウ,ヒョウモンチョウ等見られる。パルナシゥスもいくらか見られたが撮影できなかったのは残念である。高山植物も場所を変えると見られるものが大きく変化する。写真はないが,がれ地には黄色や青いビオラと思われる植物の群落があるところもある。

 キルギス共和国は昨年に引き続き2回目になるが,素晴らしい風景と高山植物・飛び交う蝶など魅力あふれる場所である。機会があれば今後も訪れたい地域である。

(Y,T)

 

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R8 日生教2024年東京大会から

 今回の東京大会は,体調不良のため現地研修をキャンセルすることになりましたので,座学のみの報告になります。
 東京大会の大会主題は,「みんなで広げよう探求の輪 ~本物から学ぶ生物科学~」でした。今回の大会でやたら耳にしたのが「探求」という言葉です。今の生物教育に流行語があるとすれば,間違いなく「探求」ははいるなと感じました。
 記念講演は,東京大学未来ビジョン研究センター教授の江守正多先生による「生物学と気候変動~IPCC最新レポートから分かること~」でした。講演を聞いて多くの先生方が感動されたそうですが,私の耳に残った言葉は「石器時代が終わったのは石がなくなったからではない。」という言葉でした。
 今回はポスター発表を1つ紹介します。立教新座中学校・高等学校の墨野倉伸彦先生の「低価格CO2センサーを活用した光合成測定実験-実験コスト削減と確実性の追求-」です。コロナ禍で多くの学校に設置されたCO2センサーは安価で,性能もそれなりということでした。高精度のCO2センサーに比べると測定値はやや正確さを欠くものの,相対的な変化をグラフ化するのには十分ということでした。アクリル板と同様に学校よっては十分余っているとのことでした。正確な測定を必要としない生徒実験では十分に使えそうです。家庭用のCO2センサーはコロナ禍で大量生産したらしく,価格も5千円程度になっているそうです

(H,S)

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