活動報告2

 ここには,活動報告の続きを載せます。

R5 日生教2022年北海道大会から
R2-2  八女の自然に親しむ会 2023年~
R6 日生教2023年大阪大会から


R5 日生教2022年北海道大会から

○ 風景・生態

 

○ 動物

 

○ 植物

 

 日生教北海道大会は,久しぶりに体面形式で実施されました。記念講演は他の研究会と合同開催ということもあり,会場の体育館は大入りでした。「恐竜研究の最前線」というテーマで,北海道大学の小林快次教授のお話を伺いました。内容は,テーマの通りですが,興味深かったのは,鳥類は恐竜から進化したものであり,分類では爬虫類の一部に含まれるというものです。もちろん,反論のある人もおられると思いますが・・・ということでした。皆さんはいかがですか?

 研究発表で印象に残ったのは,愛媛県立松山東高校の先生の「蛍光粒子を用いた腎臓組織標本の開発と活用」です。以前は墨液を注入する実験が紹介されていましたが,墨液に代わりにポスターカラーなどの色素を用いて腎臓の動脈と静脈とを染め分けたものです。モノクロからカラーにバージョンアップしたことになります。教室の後に,実物が展示されていましたが,ブラックライトを当てると輝いて大変綺麗でした。

 現地研修は,前回と同じ「緑岳コース」です。前回は悪天候のため途中で引き返すことになりましたので,リベンジで参加された方も数人おられたようです。私も年齢的に考えて今回が最後のチャンスだと思い参加させてもらいました。大雪高原山荘から緑岳山頂までは直線距離で約4.5㎞,これなら何とかなるという気持ちで登り始めました。ところが,最初の急登部分(樹林帯)の0.5㎞で状況は一変しました。生まれて始めて,山登りの途中で意識が薄れていく感覚を覚えました。「六根清浄,お山は晴天」という言葉が脳裏に浮かんできます。何か声でも出さなければ,意識がなくなってしまいそうな気分でした。下山後,他の方からも同じように気分がすぐれなかったとの話を伺い,私だけではなかったのだなと少し安心しました。「睡眠不足のためだったかもしれない。」とおっしゃっておられました。
 樹林帯のぬけると,お花畑に入ります。傾斜も緩やかになり,多少景色を楽しむ余裕ができます。ちょうど,エゾコザクラが満開でした。キアゲハ,ミヤマカラスアゲハ,エゾシロチョウも飛んできてくれました。お花畑をぬけると「ハイマツ廊下」と呼ばれる低木林の中を通ります。ハイマツは元々グイマツ林の低木だったものが,寒冷のためにグイマツが絶滅してしまったために,現在のような姿になったそうです。「ハイマツ廊下」では,ハイマツが低木層だった時の姿を残しています。
 岩礫帯に入ると,また急登です。ここはナキウサギの棲息地です。ナキウサギの姿をみることができた幸運な人もおられたようですが,私は残念ながら声を聞いたかもしれない程度でした。最後の急登では,皆さんのペースについていけず,頂上には最後の到着者としてたどり着いたしだいです。頂上では,十分な観察を楽しむ時間もなく,すぐに下山することになりました。もう二度と到着できることはないだろうと思い,スタッフの方に記念写真を撮っていただきました。
 今回の野外研修は体力的な敗北感がぬぐえません。研修会への参加の方法を考え直す時期にきていることは確かなようです。写真を撮りながら集団に同行するには,他人より速く歩く必要があります。参加するコースによっては,何かを諦める必要があるようです。

(H,S)

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R2-2  八女の自然に親しむ会 2023年~   (H,S)

2023年

<4月23日>八女市山内童男山古墳周辺
 
 今回の話題は「ギンリョウソウ」・「ハナイカダ」です。

 「ギンリョウソウ」は漢字表記では「銀竜草」となります。宝理先生のお話では,「竜」を「リョウ」と読むのは,かの坂本龍馬と同じだとのことでした。銀の竜のように見えなくもないかなとは思います。
 「ギンリョウソウ」は葉緑素をもたないので,光合成をすることはできず,他の生物から有機物を獲得することになります。私たちの若いころは「腐生植物」と呼ばれ,落ち葉など分解して栄養を得ていると思っていました。長田武正先生の「検索入門野草図鑑」にも「腐生は死物寄生ともいい,生きた他の生物から養分をうばうのではなく,生物の死体(たとえば落葉)から有機物を得て生活することをいう。」と記述されています。長田武正先生の説明は,当時の一般的な解釈だったと思います。しかし,近年,菌類の研究が進むと随分説明が変わっているようです。
 実は,「ギンリョウソウ」は落葉を分解して有機物を獲得する能力はなく,樹木と共生している菌類から間接的に樹木の光合成産物を得ているとのことです。「ギンリョウソウ」が落葉の堆積した場所に生育するのは,樹木と共生している菌類がその場所に生育しているからということのようです。近年,この菌類が生態系で重要な働きを担っていることが次々に明らかになってきています。

 「ハナイカダ」は,花が葉の上に咲き,葉をいかだに例えて命名されたものです。雌雄異株で,花は主脈(中央脈)の上に咲き,雌株では1(~3)個,雄株では複数個あるようです。「ハナイカダ」は,よく葉から開花する特別な植物として紹介されています。古典的な植物学は顕花植物の体を根・茎・葉・花の4つの器官に分けています。そして,花は茎の一部から形成されている事実を重要視してきました。これは,間違いであるとは申しませんが,少し視野を広げると,維管束の周辺に形成していることが見えてきます。「ハナイカダ」の花も主脈の上です。ウキクサの花はどんな場所に咲くかを確認したくなりました。植物の形態形成を発生という視点で捉えると,維管束とその周辺の細胞が重要な働きをしていると思います。ヤマノイモのむかごも葉柄周辺の細胞から形成されていると思います。
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5月14日>八女市矢部村釈迦岳登山道周辺
 今回の話題は「スズタケ」の一斉開花?と夏緑樹林の遷移についてです。

 2022年も5月にこの場所を訪れています。頂上部付近で「スズタケ」の枯死が確認されたことから,2021年に各地で話題になった竹の開花がこの周辺でもおこったのではないかとすいさつしました。事実は以前一面を覆っていた「スズタケ」がほとんどなくかっていたということです。そこで,一斉開花よりこの一体の「スズタケ」が枯死したのだろうと推察したわけです。残念ながら,現時点ではこの地域の2021年の「スズタケ」の一斉開花の情報を取得できていません。しかし,一応2021年に「スズタケ」の一斉開花が起こったとして話を進めていきます。
 今回の観察でわかったことは,「スズタケ」の一斉開花は広範囲で起こっているが,すべての「スズタケ」が枯れたわけではないこと。また,「スズタケ」林の回復は場所によって異なるということです。2023年もごく一部の栄養体で開花しているのが観察できましたし,夏緑樹林の林床はまだがらんとした状態です。そこで,林床にブナの芽生えがないか注意しながら山道を歩いていると見つかりません。ふと見上げると思いの外ブナが少ないのに気づきました。釈迦岳の頂上部はブナ林とばかり思い込んでいたので,意外な気づきでした。一斉開花でブナの種子が林床で芽生えているのではないかという仮説は残念ながら証明することはできませんでした。やはり,山道を歩いただけではだめで,ブナの木の周りをきちんと調べるべきでしょう。しかし,他の夏緑樹の芽生えは観察できましたので,一斉開花が極相林の維持には役立っているような気はしています。
 頂上付近では,2022年5月はウグイスのさえずりとソウシチョウの鳴き声が響いていましたが,2023年はウグイスのさえずりは聞こえませんでした。昨年より,植物では春の訪れは早かったようですが,ウグイスは少し違っているのでしょうか。
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 <6月11日>筑後市津島広域公園
 今回の話題は「ブラジルチドメグサ」の花・果実・種子です。

 「ブラジルチドメグサ」は特定外来生物に指定されている厄介な植物です。繁殖力が強く簡単に除去したぐらいではまた復活してきます。八女高校で生物部を指導していた時代には,「幸いなことに,ブラジルチドメグサは福岡県では種子形成を行っていない。」という話を耳にしていました。この話の情報源は不明です。しかし,八女高校生物部は,2014年,筑後市付近の3ヶ所でブラジルチドメグサの開花を確認しています。(P1 ブラジルチドメグサ,その驚異の繁殖力)残念ながら,特定外来生物を生きたまま持ち帰るのには,特別な許可が要りそうなので,形成された子房から発芽可能な種子を得ることはできていません。可能な範囲で言えば,「種子形成が強く示唆されるような果実を確認した。」ということになります。今回も確認状況は変わっていません。しかし,広域公園の広範囲に繁殖している「ブラジルチドメグサ」が大量の種子を形成しているとすれば,状況は極めて深刻と言わざるを得ません。種子は「休眠」と言われる状態へ移行すると何年も発芽可能な状態が続くことになります。対策に何か妙案はないものですかね。
 なお,今年も多数のジャコウアゲハが,前年植草のウマノスズクサを発見した場所周辺を乱舞していました。しかし,残念なことに短時間でウマノスズクサを発見することは私にはできませんでした。このことは,どんな意味があるのかなと思いました。
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<7月16日>広川ダム上流部
 今回の話題は「水害後の現状」及び「ニイニイゼミ」です。

 本年の梅雨も各地で様々な災害を引き起こしています。広川町でも,広川の土手が崩落し民家が流されるなど被害が発生しています。今回の観察地の広川ダムの上流部はまだ崖崩れのため通行止めになっていました。この災害は,そろそろ毎年起こることを前提に考える時期が来たと思います。流木が流れてきて橋を塞いでしまい,橋が壊れてしまうという画像は繰り返し見てきた気がします。山では倒木か放置されている場所を少なからず目にします。まずは国レベルで,この倒木処理から始めるのはいかがでしょうか。例えば,倒木をすべて運び出すのは無理なので,国レベルで企画を決めて「まず,一定の長さに裁断する」など。
 
 「ニイニイゼミ」は一時期都市部から姿を消しかけていたセミです。近年,筑後地区では少し復活している感じがあります。しかし,今回の研修会もそうですが,写真を撮ろうと一生懸命に探すのですか,なかなか発見できません。これは,加齢のため視力が落ちただけでは説明がつきません。「ニイニイゼミ」は簡単に見つかる場所にはいなくなっていることだと考えます。これは,数が減少しているからだけて説明がつくのか,セミ自身の行動にも変化が現れているのかについては,興味がありますね。
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 今回の話題は,絶滅危惧種「サデクサ」・「アシナガモモブトスカシバ」及び外来種「ウチワゼニクサ」です。

 絶滅危惧種に国レベルの指定と都道府県レベルの指定とがあります。「サデクサ」は福岡県では絶滅危惧種です。湿地に生育し,ママコノシリヌグイやイシミカワによく似ています。特徴は,托葉鞘(葉の付け根の葉のように見える部分)がギザギサに切れ込むところです。以外に見逃しやすい特徴なのでこれまで,あまり気にかけていなかった様な気がします。
「アシナガモモブトスカシバ」は福岡県では,2021年に筑後市で発見されました。地味な絶滅危惧種とも呼ばれています。筑後市の発見場所には毎年大量に発生しているので,近くで食草のある場所にも棲息しているのではないかと思っていました。ちょうど,食草のゴキヅルが咲いていたので注意深く探していると,数頭の「アシナガモモブトスカシバ」が飛んでいるのを発見しました。まじめに,「アシナガモモブトスカシバ」の分布調査を実施したら,筑後平野のクリーク地帯にはまだ他の棲息場所も見つかりそうな気がしています。

 「ウチワゼニクサ」は,北米原産で,日本以外にも多くの国で野生化しているようです。水草を扱っている店で販売していて,私が始めてみたのは,恐らく,つれあいの実家のお寺だったと思います。葉の形がちょうどハスの葉に似ているためか,入り口付近で栽培されていました。外来種でなければ,寺の風景によく似合っていると思います。ブラジルチドメグサに似ていると言われますが,浮葉はほとんど作らないようです。そのためか,今回「ウチワゼニクサ」を確認したのは,水門付近の浅い場所だけでした。恐らく,ブラジルチドメグサのような繁殖力はないと思いますが,要警戒ですかね。
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 <11月12日>筑後市溝口竈門神社
今回の話題は「ウチワゼニクサ」及び「タケテングスビョウ」です。

 「ウラワゼニクサ」は9月に続き2度目です。散策をしていると,9月例会の「ウチワゼニクサ」のことが話題になりました。私が水門の近くにある水生植物は「ウチワゼニクサ」でしたと報告すると,会員の方から「タテバチドメグサとどう違うんですか?」という質問がきました。ネットの写真を比較してもなかなか相違点が見つかりません。「ひょっとすると同じものかも・・・」ということで宿題になりました。この問いを解決してくれたのがウィキペデアの「ウチワゼニクサ」に関する記事です。一部引用すると,「タテバチドメグサという和名もあるが,これは日本でタテバチドメグサ (H. vulgaris) と記録された個体が,のちにウチワゼニクサであったことが判明したためであり,その後タテバチドメグサという名称は,ウチワゼニクサの異名として扱われている。」と説明されています。やはり,会員の勘は正しかったようです。元々,アクアリウムの水草として販売されていたようなので,水辺に生えると思っていましたが,今回は水気のない灌木の下に広がっていました。前回は「恐らく,ブラジルチドメグサのような繁殖力はないと思いますが,要警戒ですかね。」と述べましたが,普通の陸地でも生息できるのであれば,外来種としての警戒のレベルを引き上げる必要がありそうですね。

 「タケテングスビョウ」はタケが感染するテングスビョウ(天狗巣病)です。天狗巣病と言えばサクラが有名ですが,タケにもあるんですね。ウィキペデアでは,「タケ類天狗巣病菌(Aciculosporium take)によって引き起こされる。」と記載されていました。いろいろな植物の天狗巣病も紹介してあります。「タケテングスビョウ」の場合は,サクラテングスビョウと少しイメージが異なり,先端部付近から,竹の花が咲き始めるような雰囲気があります。やがて開花が始まると勘違いしそうです。

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R6 日生教2023年大阪大会から

 


 大阪は新幹線で行くことができるので,経費の節減も考え当日朝の出発を予定していました。ところが,台風の影響や地理の不案内もあり,到着は発表時間のぎりぎりになり,多くの役員の方にご迷惑をおかけすることになりました。それでも,何とか間にあったのは多くの親切な方々のおかげだと感謝申し上げます。

 研究発表はあっという間に終わり,実質的には研究協議からの参加となりました。私は第2分科会の「探求活動」に参加しました。京都教育大学名誉教授の村上忠幸先生の「自由で協働的な探求学習の授業づくり」,大阪教育大学特命研究員の向井大喜先生の「探求活動における問題解決の様態と形成的評価の在り方~振り返りツール「4つの窓」による個の可視化~」の2本の発表をベースに研究協議が行われました。色々な学校で先生方が苦労されているのはよく理解しましたが,そう簡単に解決方法が見つかりそうにはないですね。

 現地研修は「自然観察入門コース~箕面の森の自然~」に参加しました。箕面昆虫館では,放蝶園がありオオゴマダラなどの南方系の蝶が乱舞していました。昆虫館周辺の自然観察では,シダ植物の葉の裏に潜む「マダニ」の観察が印象的でした。過去に私も「マダニ」に噛まれたことがありますが,こんな場所に隠れているので防ぎようがないような気がします。定期的にマダニチェックをするのが正しいようです。
 今回の研修の初耳学は「エビフライ」です。「エビフライ」とは,リスがマツの果実を食べた後の食べ残しで,その形が「エビフライ」にそっくりなことから名付けられたようです。なぜ,今まで記憶にないのだろうかと調べでみると,九州には「ニホンリス」は棲息していないためではないかという決論になりました。
 今回の研修で気になったのが「ニホントカゲ」です。箕面の森のあちこちで「ニホントカゲ」を見かけました。自宅周辺では,この「ニホントカゲ」とであうことが極めて稀になっています。この2つの事実にどのような折りあいをつければいいのでしょうか。箕面の森周辺の市街地にどのくらいの頻度で「ニホントカゲ」に出会えるのかを調べることは無理なので,自宅の近隣の森にどのくらいの頻度で「ニホントカゲ」に出会うのかということに関心をもってみようと思います。
 今回の研修に参加した動機は,「マミズクラゲ」との再開でした。結果は,「△」です。見るには見たのですが,十分に観察することはできませんでした。かなり残念な気持ちになりました。今回の研修で最も素晴らしいと思ったことは,研修後の情報の共有システムだと思います。残念な気持ちでいっぱいだった「マミズクラゲ」も,同行の先生がビデオをアップしていただき,心が癒されました。
 反省点は,体調管理です。もう少し,健康管理に注意しようと思います。多くの役員や参加者の方々にご心配をおかけして申し訳ありませんでした。

(H,S)


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